投資の基本原則、「利食い千人力」とは?
トレーダーを長年やっていると、投資の基本として格言になっているこの言葉を聞いた事がある人も多いのではないでしょうか?
この2つの言葉は、相場で生き残っていきたいのであれば、必ず覚えて実践するべき意味合いの言葉となります。
まず「利食い千人力」を私なりに説明します。
利食い千人力の「利食い」は利確のことを指し、見切り千両の「見切り」は損切りの事を指します。
利食い千人力のその意味は、
「少しでも利益が出てるならそこで利確(売却)してしまえ」という意味です。
例えばFXで言うと、利確20pips/損切り10pipsの場面で買い(ロング)で取引したとして。
利確目標は直近高値、現在は含み益の状態でありその目標高値まであと7pips残ってるとしましょう。
現在の含み益は+13pipsですが、利確目標である直近高値までもうあと一歩のところで届かない。
でも届きそう?でも届かないかも?どっちなんだ?とにかくグズグズした状態で、こちらもイライラやきもきしてしまうような値動きの仕方です。
これは頻繁に目の当たりにする光景ですよね。
イライラしてトレードに影響してしまうくらいなら「利食い千人力」の言葉通り、サッサと+13pipsの利益を確保してしまう方がトータルで見て良い選択である事がほとんどなのです。
人間は感情や本能のカタマリで、機械のように無感情で淡々というワケには簡単にいきません。
利を伸ばす事は良いことですが、毎トレードで律儀に粘るのではなく、あと一歩で届かず値動きが失速してしまうパターンだってよくある事ですし、怪しそうなら時には目標まで待たずサッサと利食って楽になればそれはそれで良いのです。
余裕で勝てたはずの試合で負けてしまうよりは100倍良いのです。
「利食い千人力」をしなければ起こりうる弊害
市場の時間帯との兼ね合いも考慮しますが、残り7pipsをケチってしまったがために、13pipsあった含み益が振りだしになったらたまったものではないはずです。(短時間トレーダーに向けてです。)
これは決してレアケースではなく、毎日トレードするなら頻繁に遭遇します。
振りだしになり、建値決済プラマイ0でポジションを一旦精算したなら全然救いはあります。
ですがそれも出来ず、いつまでも保有したままマイナスに転じてしまったらどうでしょう?
自分の心や精神状態はどう変わっていくか?これを考えなければなりません。
どんなトレーダーもきっとそれまでは平常心でトレードしていたはずです。
トレードルールもきっちり守っていたのだと思います。
しかし、ある時からそれが急にできなくなる・・・それって評価損益がプラスだったのがマイナスに転じてしまったのを目の当たりにした瞬間ではないですか?
そこからトレードルールが自分の中から全て吹っ飛んでしまうのではないでしょうか。
「さっき怪しいなと思ったんだよ、なぜ俺は利食いしなかったんだ・・・」
「さっき利食いしとけば今ごろ気が楽だったんだろうな・・・」
「さっきまで+13pipsあったのにマイ転するとか全く意味不明だわ!!」
「こんなの時間のムダじゃねーか!!悔しい!!」
「誰だよ!!売りを仕掛けたKYな奴は!! クソ!!絶対取り戻してやるから!!」
「なんでこの俺がこんなに苦しまなきゃならないんだ!!」
思い当たる節はありませんか?昔の私は見事に全て当てはまりました。
これは精神的ダメージが出て感情的になってる証拠です。
正直稼げるようになった今でも、この中にあてはまるものはあります。
キレイごとは言いません。人間には感情がある以上仕方ない事だし無くなりはしないと思います。
なぜなら、普段は感情がない冷徹沈着男と揶揄されているあのBNF氏ですら、7億円だったか損失を出してしまった際は、仕事道具であるモニターを思わず叩き割ってしまったとインタビューで答えていたからです。
(彼は株式投資にて、資産数百億円規模の巨額を作った伝説のプロトレーダー。)
このエピソードを聞いた時は彼も人間だったのだとなんかホッとした私が居ました。笑
「追い込まれる状況」は最悪の状況である
とはいえ、このまま本能の赴くまま何もしないで見過ごすわけにはいきません。
何らかの対策を考えないとまた同じ失敗を延々とくり返し、いつまで経ってもうだつの上がらないトレーダーのままから抜け出せないでしょう。
自分がその時に「何をしているか?」を分析する必要があります。
人は追い込まれた苦しみから一刻も早く逃れたく、何とか逃れようとする行動を必死で取ります。
しかしその逃れ方は良い逃れ方ではないことは明らかです。
本当は損失が大きく膨らんでしまう前に小さく損失を確定するべきなのですが、そもそもが損失を認めることなどできず、「早く取り戻したい」本能がすでに脳内を支配しています。
- 下がってくる度に無限ナンピンして助かろうとしてしまう
- 値動きに翻弄され、ムダな上下ドテンをしまくって往復ビンタを食らってしまう
- ムダに乱射しまくり、すぐに損切りしまくって損切り貧乏になってしまう
これは戦略のあるトレードと言えるでしょうか?
こちらもかつての私はパーフェクトにやっていました。
このように、自分が何をやっているかわからなくなるトレードは絶対に避けるべきです。
私が最も恐れていることはすでに大惨事コースが始まっている、「追い込まれる状況」です。
周りが全く見えずブレーキも効かなくなる最悪の状況のことです。
ブレーキが効かなくなるという事はつまり、資産を失ってしまう可能性が極めて高くなると知ることです。ただでさえリスクを取ってるのに更に余計なリスクを取る必要はありません。
これ以上踏み込んだら追い込まれてしまうかもしれないリスクを感じた時は、
「利食い千人力」の力を借りて逃げたら良いのです。
どうか天秤にかけてみて下さい。
「追い込まれる状況」ほど大きなリスクはないと私は思います。
「利食い千人力」と「勝ち逃げ」の効能
短時間トレーダーは「利食い千人力」を普段から実行するクセを付けておく事で、自己コントロールは徐々に磨かれていきます。それはつまり、自制(自己コントロール)ができるようになることです。
対義の「見切り千両」は損切りのことで、見切り(損失)を適切な段階でしておく事で、「のちにもっとたくさんの利益を生む機会に出会える可能性があるかもしれない。だからその可能性にいつでも対応できるようズルズルしないでしっかり備え(損切り)をしておこう」という意味です。
見切りの早さにはそれだけの価値があるのだよということです。
結局どちらも必須の考え方と言えるでしょう。
そして自制がきくようになると、追い込まれた状況からの大事故に繋がることは極めて減ると考えますし、自分で何やってるかわからなくなる状態も極めて減ると考えます。
今まで思わぬ変動が来たとたん、パニックで何もできず固まってしまっていた自分が、動じず冷静に対処ができてくるようにもなるということです。
この2つの言葉が投資の基本とされてる格言(考え方)なのですが、それでも巷でよく聞く「チキン利食いをしてはいけません」が未だに蔓延っているようです。
まさかそんなアホな事は私は言いません。むしろチキン万歳、チキンの心です。
もう一度言いますが、確かに利を伸ばすことは良いことです。
私自身、分割ポジションの3分の2をチキン利食いで+5~10pips程度の範囲で確定利益にし、「すでに多くの利益を確保した」という安心状態の中で、残り分をデイトレレベルのターゲットまで引っ張る事は相場の状況次第ではたまにやります(それでも残り分は25~40pipsの範囲で利確が多い。)
しかし、チキン利食いが良くないなんてそれはナンセンスな話だと思うのです。
こんなことを言う人は未だに居て、本当にトレードしているのか?と問いたくなります。
「それはトレードスタイルにもよるだろ」って話ですね。
私が上述した理由をもってしても、それでもチキン利食いは良くないと言えますか?という話です。
相場は生き物(ランダム)ゆえ、そういつもいつも思惑通りに動いてはくれません。
それにより相場を信用しすぎてはいけないし、ポジションに惚れるなと考えます。
誤解を恐れずに言いますが上手に聞いてほしいです。
FXトレードは1回で大きくpipsを取る人が偉いみたいな風潮ですが、そんなことはありません。
もちろん大きなロットで値幅を伸ばし、数百pips取れるような人は素晴らしいと思います。
長年の苦境の中でスイングトレードを何度も試みた事もある私の性格ではそれができませんでした。
リスクリワードの概念に囚われることなく私が無理なく行えるトレードは・・・
たとえ小さなpipsでも大きなロットを使い、極めて短時間で決着をつける短時間デイトレとスキャルピングをくり返し、リスクリワードが1:2すら無くても勝率でカバーできるスタイルでした。
私にとってはこれが最も腹がくくれてストレスが軽減できるトレードスタイルです。
私のような短時間決着型のスタイルでは、確実に勝てる試合では一切の迷いを捨て、確実に勝ちを仕留め、「利食い千人力」、「勝ち逃げ」は必須だと心に刻んで日々トレードをおこなっている次第です。
「いくらpipsが取れたか」が重要ではなく、取るpipsが小さくても「いくらお金を増やせた」かが重要なのだと私は思います。